続・今日もやっぱりかえる顔

なぜか巻き起こってしまうまぬけな日常を、ひらがな中心のまぬけなテイストでお届けします。ときどき乃木坂46。

「びんぼう予算は3まんえん」の巻

大学に入学するために上京した僕は
町田の街で住むところを探すことにしました。
予算は3万円です。

町田の街へ着くと
すぐに不動産屋さんをめざし
まずは情報収集からはじめます。

不動産屋さんの扉にはってある
物件情報をじーっと見ていくと
なかなか3万円の物件はないようです。
はってある物件は
わんるーむで6万円とか8万円とか
えらい値段が書いてあります。

完全に予算おーばーもいいところです。
その不動産屋さんに書いてあった
物件の相場によると
町田ではワンルームで
6万円から8万円が相場だそうです。

その時はじめて気がつきました。
3万円ではアパートをかりるには
まったく足りないことを。

上京をするときに
うちの母親が言っていたのを思い出しました。
「3万円も出せば、いい部屋がかりられる」と
おもいっきり知ったかぶりをしていました。
すべてはあのしったか母親を信じた
僕が悪かったようです。

そうすると次から次に思い出されるもので
新宿のアパマン館でのできごとが
今さらながら恥ずかしくなるのでした。

これはまずいです。
作戦を変更しなければなりません。
どうやら3万円ではアパートを借りるには
予算が足りないようです。

僕は予算がぎりぎりなので
食費を切りつめることにして
アパートをかりる予算を
4万円に設定し直しました。

それだけでなく
町田の駅近くは物件の値段も高いだろうから
できるだけ駅から遠い不動産屋さんを探すことにしました。
これでなんとか物件が見つかるのではないでしょうか。

駅からかなり離れると
東京でものどかな田園風景が
広がってきました。
町田は東京都なのに
緑がいっぱいあっていいなあ
なんて思いながら不動産屋さんをさがしました。

しばらくすると
へんぴなところに
独立自営でおなじみの
せんちゅりー21という不動産屋さんが
ありました。

せんちゅりー21という名前の不動産屋さんは
いろんなところにありますが
支店と本店なんていう関係ではないんですねえ。
すべて独立したひとつの不動産屋さんで
ろいやりてぃを払って
せんちゅりー21という看板を出しているんですね。
だから全部別のお店です。

パン屋さんの
ポンパドールというお店も
独立自営のお店と聞いています。
名前は同じなのに
売ってるパンが違うのは
なんだへんなかんじです。


せんちゅりー21の中に入ると
おねえさんがひまそうにしてました。

ひまそうなお姉おねえさんに
「ええとこのへん4まんえんで借りれるアパートありますか?」
と聞くと
「学生さんですね。」と言われて
3つ物件の間取り図を見せてくれました。

お姉さんが出してくれた
間取り図を見ると家賃も同じ用紙に
書いてありました。
1まいめが4万8千円
2まいめが4万5千円
3まいめが4万2千円でした。

ちょっと待ってください、おねえさん。
予算は4万円と言っているのに、
みんな4万円こえてるじゃん
という言葉をやっと飲み込みました。

ここは仕方がないようです。
4万円でも予算がきっと足りなかったのでしょう。
町田で最初に見た不動産屋さんの値段より
ずーっと安いんで
それで我慢するしかなさそうです。

ひまそーなおねえさんは
さらに話を続けます。
この物件だったら
「今から『ないけん』できますよ」

「ないけん」ってなんでしょ。
ってきっと僕の顔に書いてあったのかもしれません
おねえさんたら僕の顔を見ると親切に
「中を見れますよ。」と
言い直してくれました。

おねえさんにすすめられるまま
僕は不動産屋さんの車に乗って物件を見に行くことにしました。

車の後部座席に座ると
とってもふかふかの
当時はめずらしいムートン調の
シートカバーが掛けてありました。
しかも車種はくらうん。

不動産屋さんって
もうかるんだなあと
思っている僕を乗せて
車は「ないけん」とやらに
静かに滑り出していくのでした。