続・今日もやっぱりかえる顔

なぜか巻き起こってしまうまぬけな日常を、ひらがな中心のまぬけなテイストでお届けします。ときどき乃木坂46。

「10年掃除機」の巻

前回掃除機を買ってから
どれくらいの時がたったことでしょう。
もう10年以上の時がたってしまいました。

買ったときには最新型だったんですよ。
「ゴミパック」なる最新機能がついていて
それを交換することで
手を汚さずにゴミを捨てられるという
最先端の画期的な技術が
使われている掃除機でした。

「最先端」の3文字にめっぽう弱い僕は
例にもれずこの画期的なゴミパックなる技術が使われている
掃除機を買ってしまいました。

ゴミパックにひかれて
買ったにもかかわらず
ゴミパックを交換したのは
この10年でたったの1回のみ。
この10年間のゴミは
いったいどこへ消えてしまったのでしょう?
掃除機の中がブラックホール化して
しまっているのかもしれません。

僕の記憶によると
ゴミパックを交換したのは
約6年前くらいでした。
これだけの長い時間を経過してしまうと
掃除機の中を見るのがこわくなってしまいます。

ゴミパックの中には6年前のゴミが入っているわけで
別の生物かなんかが育っていたら困ります。
ゴミを食料に、掃除機本体の大きさまで
育ったものがゴミパックに住んでいるかもしれません。
あーこわっ。

まあきたない話はおいときまして、
ゴミパックを変えなかった理由は簡単です。
ゴミパックがなかったからです。
ゴミパックを変えなくても
ういーん、ういーんといって
ちゃんとゴミを吸い込んでくれるので
ゴミパックを変えようとは
まったく思ってもいませんでした。

全部屋フローリングに引っ越してからというもの
掃除機を出すのが面倒くさくなっちゃって
最近はずっと人力掃除機(ほうき)と
クイックル(商品名)を使って掃除をしていました。

実はこの掃除機。
買ったときから
いわくつきの掃除機だったんですよ。

僕は東京の大学に通うために上京してたのですが
上京したてのころは
まったくお金がなく
1日500円もあれば十分食べていける
ような経済状態でした。
今考えると、とってもびんぼうですねえ。
かわいそうです。

もちろん掃除機も買えるはずがありません。
掃除機と冷蔵庫はありませんでした。
プレハブのアパートだったので
とっても寒く、冷蔵庫は必要ありませんでした。

それをふびんに思った
僕の姉が
なんとふとっっぱらなことに
掃除機と冷蔵庫を買ってやると言うのです。

僕は掃除機と冷蔵庫があるなんて
憲法で保障された文化的な生活(憲法25条生存権とやら)が
やっと送れると
本当に心から喜びました。

姉の話によると
一回で払うお金がないということで
5000円ぐらいずつの分割のローンを
くむようにとの話でした。

学生ですので
そう簡単にローンがくめるはずがありません。
少しでもやすくディスカウントショップや
大型家電店で冷蔵庫と掃除機を
買おうと思っていたのですが
収入も全くない状態でローンをくむことができませんでした。

唯一ローンをくめたのが
赤いカードの名前で有名な
取り立てが厳しいと評判の
○井というデパートみたいなところでした。

○井をご存じない方のために
○井とはブランドの服とかが売ってあって
おしゃれなデパートに見えます。
が百貨店ではないみたいです。

学生でも簡単に○井のカードを持つことができます。
かなりの大学生の方が○井のカードを
持っているんではないでしょうか?

取り立てが厳しいかわりに
よほどのことがない限り売ってくれるので
上京したてで信用も何も全くない僕にも
ローンをくんで冷蔵庫と掃除機を買うことができました。

僕はとっても喜んで
大事に使いましたよ。
両方とも10年以上使いましたからね。
僕のそのときのうれしさが
10年も使うことでみなさんにも
わかってもらえるんじゃないでしょうか?

喜んでばかりもいられません。
ローンで買ったので月々の支払いが
待っています。

第1回目の支払いは
すぐにやってきました。
姉のことだから
「お金なんかない。自分で払え。はっはっは。」と
突然言い始めるかもしれず
内心はどきどきものだったんですが
普通の封筒に第1回目の5000円が入って送ってきました。

普通の封筒にですよ。
現金を送るときには現金書留が安心なんですが
けちな姉はきっと現金書留で無駄なお金を使いたくなかったんでしょう。
普通の白い封筒で送ってきました。

これですっかり安心しまいました。
ちゃんと約束通りローンで
払う分の5000円も送ってきたし
これから先ちゃんと払ってもらえるものだと
油断したのが全てのまちがいの始まりでした。

次の月になって
支払いの期日になっても
姉からの白い現金入り封筒は届きません。

支払いの期日を過ぎてもまったく届く気配がありません。
でも1回目はちゃんと払ってくれたから
今後もずっと払ってくれるだろうと
勝手に思っていました。

しかしどんなに待っても
姉からの現金入り封筒は
届きませんでした。

そのうち3日もすると
取り立ての厳しいカードですから、
カード会社から電話がかかってくるようになりました。
「まだ今月分お支払いいただいてないようですね。
 いつお支払いいただけますか?」
いつって言われても
お金はないんだからそう約束はできません。

でもカード会社の人は
「今日払ってください。遅くても明日までです。」
といって電話を一方的に切ってしまいました。
さすが噂どおりの取り立ての厳しさです。

僕はお金は全くないので
とうとう姉に電話をしました。
「あのー、今月分のお金どうしたんでしょうか?」
姉の機嫌を損ねてしまうと、今後払ってもらえないかもしれないので
おそるおそる僕が聞くと、

「そんなの自分で払え、あんたがつかっているんでしょ。」と
とわけのわからない理屈をこね始めました。

「払ってくれるって言ったじゃない。」
と僕が反論すると、
姉はまったく悪びれた様子もなく
「ねえちゃんばっかり、あてにするな!」
と言うなり電話を切ってしまいました。

僕はあ然としました。
やっぱりこんな結果なんですよね。
だいたいわかっていました。
はじめから姉を信用した僕がまちがっていました。
小さいときから僕をばかにして笑うことが趣味の姉が
そんなにやさしいはずがありません。

最初からローンのお金を
払わないつもりだったんですよ、きっと。
だからローンをくめって言ったんですね。
おかしいと思っていました。

その当時社会人だった姉だったら
買おうと思えば買えない金額ではなかったのに
ローンをくんで買い物をするのは
おかしいと思っていました。

きっとはじめっから
1回だけ払って後は僕に払わせるつもりだったんでしょう。
1回でも払ってやったんだから
ありがたく思え的態度が姉の言葉から
ひしひしと伝わってきました。

姉が電話を切った後も
しばらく受話器を持ったまま
僕は固まってしまいました。

アパート代にとっていた
お金を取り崩し、ローンを払うしかありません。
とってもがっかりです。

3回目の支払い以降も姉は払ってくれるそぶりは
まったくなく
貧乏な中食費を切りつめて
毎月の支払いにあてました。
それが1年間続きました。

たいへんな思いをして払ったので
掃除機にも、冷蔵庫にも思い入れが
とっても深かったんですねえ。

あれから10年以上がたちました。
たいへんな思いをして払っただけあって
持ち主のためによく働いてくれました。
そろそろ休ませてあげたいと思います。

この10年間
ありがとう冷蔵庫。
そしてありがとう掃除機。
長い間お疲れ様でした。