MTVアンプラグドに乃木坂46の生田絵梨花を迎えて、2017/12/25都内某所で「MTV Unplugged: Erika Ikuta from Nogizaka46」を開催決定。
Webニュースの速報に触れたのは、昼休みに街中を歩きながら、ふと見たスマホの画面からだった。
「MTVアンプラグド」と「生田絵梨花」という組み合わせに、隣に表示されているニュースを見ているのかと混同してしまうほど、一瞬我が目を疑い、また視力が悪くなったんだなと、誰も見ていないのに、照れ笑いを浮かべてみた。
もう一度ニュース記事を凝視してみる。
ぼやけていた視界は霧が晴れるように徐々に文字の列を映し出し、
1つずつ文字が浮かび上がってきた。
そこにはやっぱり「MTV Unplugged Erika Ikuta」と書いてあった。
出典:MTVジャパンhttp://www.mtvjapan.com/home
突然
ビルの谷間から見える初冬の空を見上げてみると、まるで吸い込まれてしまうかのように青く澄み渡っていた。
立ち止まる横を、多くの人波が通り抜けていく。
まるで昨日とまったく同じ光景を見ているかのように。
夢のような文字列の組み合わせが、現実に起こっていることと知らしめるには、
それで十分だった。
夢じゃなかったんだ。
同時にちっぽけな自分の存在を恨んでいた。
出会い
あれはいつの頃だったか。
姉の部屋の前を通るといつも澄んだ歌声が聞こえてきた。まるで本物の天使が歌っているのかと思った。
フランダースの犬に出てくるような、男の子の天使だ。
その歌声はCDコンポのスピーカーから流れてきた歌声だった。
CDコンポのすぐ脇には、ジャケットの前を広げて長髪を風になびかせた
知らない男性が笑っているCDケースがあった。
そのケースにはさわやかな笑顔の横に、こう書いてあった。
乾杯 長渕剛
それからというもの、亡くした兄と同じ名前のアーティストの歌声に夢中になった。
過去に発売されたアルバムを全部買い漁った。
そして本物の天使の歌声が現実に存在することを知った。
そしてこの天使の歌声はもう現実に存在していないことを知った。
諦め
現実に存在していたはずの天使は、もう天使でなくなっていた。入院による長期休養の影響で、すでに歌唱方法を変えたというのだ。
たくさんの音楽を聴いて、同じような天使がほかにもいるはずだと信じて、探し回ったがなかなか出会えることができなかった。
尾崎豊という魂の歌声の天使もいたはずだったが、もうすでにそこにはいなくなっていた。
その後、魂を揺さぶる天使の歌声に、再び出会うには、あと15年もの歳月が必要だった。
音楽の天使がいないのであれば、自分で作ろう。次第にバンド活動へと傾倒していった。
気づき
天使がもういないと知ってから、それまでとはウソのようにほかの音楽を聴かなくなった。
自分の作り出す音楽に次第次第に傾倒していき、天使の歌う音楽性と自分の音楽とのギャップに、次第次第に追い込まれていた。
目指す音楽性とは別に、一時しのぎの観客の歓声を得るために、コミックソングを歌うようになっていた。動機が不純な分だけ悪魔の歌声に成り下がっていた。
確固たる自分の信念があるはずなのに、自分を抑えて、いつも相手に合わせてしまう。
悪い癖だ。
そんな時だった、バンドのメンバーが1枚のアルバムを持ってきた。
ひげを蓄えた金髪のミュージシャンがフォークギターを抱えたジャケットの写真だった。
自分の音楽もままならないときに、ほかの人の音楽なんか聴いている場合じゃない、
とイラついて俺は言った。
「まぁ騙されたと思って聴いてみな」
仲間は笑って言った。
正直エレキ全盛時代に、フォークギターは古く見えた。古い曲だから喫茶店のBGMのように聴けるんじゃないかとふと思った。
BGMだと思ったアルバムは、BGMでもありBGMではなかった。
まるでそこで弾いているかのようなギターを奏でる音、そしてリズムに合わせた足音。飾りっ気がない自然体の歌声に肩ひじ張らないギターテクニック。
激しくない自然体のパフォーマンスな分だけ、
頭を激しく殴られたような衝撃を覚えた。
まさにカルチャーショックだった。
海の向こうには、すごい天才がいることに気づかされた。
天才の演奏は、MTVアンプラグドという番組のシーンだということを、人づてに聞いた。
そのアルバムには Eric Clapton unpluggedと書かれていた。
Unplugged: Expanded & Remastered (2cd/DVD)
- アーティスト: Eric Clapton
- 出版社/メーカー: Rhino
- 発売日: 2013/10/17
- メディア: CD
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転機
それから数年たった。しかし、まだ苦悩を続けていた。
自分の音楽を誰かに認められたいから迎合し、嘘をつきたくないから、魂を揺さぶる天使の面影を捨てることも、またできなかった。もがき続けていた。
そんな時に3年前のデビューアルバム『First Love』で前人未到の400万枚の売り上げを達成した宇多田ヒカルが、MTVジャパンの開局記念として、海外の天才を生んだMTVアンプラグドの日本初制作に出演するというのだ。
若くして才能を開花させた日本の天才歌姫が世界の天才ギタリストと肩を並べるときがやってきたのだという。
日本初のMTVアンプラグドが開催されたその日、客席から手を伸ばせば届きそうなステージには当時若干18歳の日本の歌姫が立っていた。
アンプラグドといえばクラプトンだ。まるでそこで弾いているかのようなギターの生音。そして音楽の息遣い。エレキギター主体の現代の音楽シーンでは再現することのできない領域だと思っていた。
日本の歌姫のパフォーマンスは輪をかけて衝撃的だった。
アンプラグドだったはず、アンプラグドだと思っていた。
「蹴っ飛ばせ!」という曲は、アンプラグドでありながら、すべての楽器が電子を放出していなくても、リズムが確実に脳裏に刻まれるかのような音楽だった。それはエレキが刻むリズムよりも何よりもリズミカルなメロディラインだった。
出典:Utada Hikaru Unplugged(DVD)
リズミカルな演奏に心浮かれて、そしてわくわくするかのように心躍った瞬間だった。
アンプラグドという電子楽器を使わないはずの音楽の分野が、若干18歳の日本の歌姫のステージで完成されたと思った。
追記:動画がありましたが、海外のサイトのようです。視聴は自己責任でお願いします。MTVジャパンから削除要請があれば、早急に削除します。
それから
MTVアンプラグドは、クラプトン、宇多田ヒカルという天才が輝きを放った舞台だった。音楽という一つの分野が一番よかった時代に、燦然と輝いていた。
MTVアンプラグドではマライアキャリー、ニルヴァーナ、ボブ・ディラン、ボン・ジョヴィなどそうそうたるアーティストが出演した。
宇多田ヒカルから始まったMTVジャパンのアンプラグドでも日本独自の進化を遂げながら、平井堅、布袋寅泰、絢香、Salyu、加藤ミリヤ、青山テルマ、JUJU、CHARA、西野カナ、中島美嘉などなど、アーティスティックなメンバーが出演をしてきた。
2017年12月MTVジャパンのMTVアンプラグド出演アーティストのライブは、今回初めて生放送で世界配信を行うことになったという。
世界初の生配信が行われるMTVアンプラグドのアーティストの欄には、よく見慣れた名前があった。
生田絵梨花。
記念すべきMTVアンプラグドのアーティスト欄にはまぎれもなく、そう書いてあった。
生田絵梨花
確かに過去の大物アーティスト同様に生田絵梨花というアーティストもまた、まちがいなく天才だ。
近年は「ロミオ&ジュリエット」のジュリエット役や「レ・ミゼラブル」コゼット役でその地位を確固たるものにした。
日本のミュージカル界を背負っていくべき、岩谷時子賞をも受賞した期待の若手アーティストだ。
また、デュッセルドルフ生まれで幼いころよりピアノを習い、その高い演奏技術と豊かな表現力にも定評がある。
ミュージカルで培った歌唱力と、国際色豊かな環境で培われてきたピアノのスキルをもってすれば、歴代アーティストに遜色ないMTVアンプラグドを成功させることも容易なことだろう。
余裕感
生田絵梨花といえばミュージカルのヒロインに代表される、お姫様のような見た目の息を飲む美しさとは対照的な、その内面の脅威的なポテンシャルで、何をやっても余裕感を感じてしまう。
ライブ終わりや握手会終わりのバスの中でも、テンション高くまわりのメンバーに絡んでいったり、関心のある会話の内容が人間の生死に関してであり、様々なメンバーに質問をぶつけては、回答の内容を比較したりする。
出典:テレビ愛知「乃木坂工事中」#072
ミュージカルのお姫様のような存在として歌っている場面も、ヒロインとして完璧なパフォーマンスを見ると、なぜか余裕感を感じてしまう。
周囲が懸命に披露している乃木坂のパフォーマンスでさえ、軽々とこなしているように見えることさえある。
きっと本人もまた懸命だと思うし、決して身体が強い方でもないんだろうけど、なぜかパフォーマンスに余裕感を感じる。
まだまだこんなもんじゃない
もっともっとすごいパフォーマンスができる
と、言われているような気がした。
出典:テレビ愛知「乃木坂工事中」#072
支え
外見とは対照的な内面を持つ生田絵梨花を一番理解して、いつでも精神的に寄り添っていた存在は、間違いなく同じ乃木坂46のメンバーだった中元日芽香だろう。
乃木坂46でのデビュー以来初めての東京ドーム公演。その公演は同時に彼女の卒業公演という意味合いもあった。
ダブルアンコールでMr.Cildrenの桜井和寿もカバーした名曲『きっかけ』を歌う、中元日芽香と同じく卒業する伊藤万理華。
そのパフォーマンスに胸を打たれるファンも多かっただろうが、一番衝撃的だったのは生田絵梨花の涙だった。
出典:テレビ愛知「乃木坂工事中」#132
デビュー以来6年間のすべてのシーンよりなにより、生田絵梨花の涙は衝撃的だった。
いつもは余裕感すら感じさせるのに、感極まって涙でぐちゃぐちゃになった顔を隠すこともしない生田絵梨花は、いつもの天才的なパフォーマンスを見せる生田絵梨花ではなく、中元日芽香を姉のように慕う等身大の生田絵梨花そのものだった。
その存在がどれだけ大切で、どれだけ精神的に支えられてきたのか
まるで、天才の内面を垣間見たような気がした。
天才アーティストの涙は、言葉で表現するより遥かに説得力に溢れていた。
アーティスト
2017年12月25日。クリスマスのこの日、世界が注目するMTVアンプラグドの舞台で、きっと生田絵梨花はまたいつもの音楽の神様に選ばれし、天才のみ醸し出すことが許される余裕感を漂わせながら、あたかも何もなかったかのように、平然と立っていることだろう。
そのピアノの技術では唯一無二の内面を表す豊かな表現力で、彼女が好きなモーツアルトの楽曲をはじめとしたクラシックや、ライブでも披露した乃木坂の楽曲をアーティスティックに演奏するピアノ演奏者として
そしてミュージカルでも披露した楽曲の歌唱では、日本ミュージカル界の至宝として、史上初のその大舞台にふさわしいアーティストとしてきっと存在することだろう。
いつもの通りの生田絵梨花として。
共演者
もしも…もし、
このMTVアンプラグド生田絵梨花の開催が、あと1年だけ早かったら、
アーティスティックなピアノ演奏者生田絵梨花のとなりには、きっと魂を揺さぶる歌声を奏でる、天使の歌声の遺伝子を持つ中元日芽香の姿がきっとあったことだろう。
乃木坂の代表曲でもある『君の名は希望』は中元日芽香の歌声が奏で、生田絵梨花が伴奏と上にハモる、絶妙のハーモニーを奏でていたに違いない。もしあと1年でも早かったとすれば…
出典:YouTube君の名は希望 中元日芽香 生田絵梨花
この日、中元日芽香のソロ曲発表の報を聞いた。
もう、遅すぎたよ…
無力感に包まれた俺はつぶやいた。
そして伝説へ
生田絵梨花はMTVアンプラグドのステージに立ち、何事もなかったかのように、東京ドーム公演でのあの必死さを感じさせることなく、そのステージに立って自らの音楽性を世界に発信するだろう。
姿は見えなくても、全世界が注目するステージ上の生田絵梨花の隣には、天使の歌声の遺伝子であり、献身的に内面を支えた中元日芽香の姿がきっと見えるような気がする。
きっと見えるような気がする。
中元日芽香の天使の歌声の遺伝子を受け継いだ、生田絵梨花はいよいよ12月25日世界へはばたく。
あの日と変わらず、確固たる自分の存在を否定し、相手に合わせているだけの俺にとっての
新たな夢の存在
として。
ERIKA IKUTAはこの日伝説となる 。