第72回紅白歌合戦で披露する楽曲に、乃木坂46が選択した楽曲は『きっかけ』という楽曲でした。
この楽曲はシングルカットされていない、2ndアルバム『それぞれの椅子』のアルバムリードと言われる収録曲です。
その収録曲がなぜファンから名曲と呼ばれるのか、そして乃木坂46が数々のミリオンを達成したシングル楽曲を抑えてこの『きっかけ』を紅白の大舞台に選択したのかを、ファン目線で時系列に確認してみたいと思います。
Mr.Childrenの桜井さんも「すげぇいい曲」と評してLiveでカバーした『きっかけ』が、名曲と呼ばれる原点を、今回は紐解いていきたいと思います。
出典:乃木坂46 OFFICIAL YouTube CHANNEL『きっかけ』
歌詞のすばらしさ
今回の記事では歌詞のすばらしさについては触れないこととさせてください。
歌詞の解説は、既にたくさんの記事が掲載されていますので、他のサイトの記事を確認していただけると助かります。
個人的には、乃木坂46のもう1つの名曲、初めての紅白出場時に披露された『君の名は希望』の歌詞の中にニックネーム(愛称)とは言えない、あだ名めいた箇所の歌詞があるため、あれだけの名曲にも関わらず、学校などの教育期間で歌えないのは、本当にもったいないことに思います。
また別の名曲『やさしさとは』もとてもいい曲なんですが、同様に唐突感がある一部の歌詞が、なんとかならなかったのかという印象もあります。『きっかけ』も曲先のイメージから綴られた歌詞のため、一部助詞抜けで歌詞がはまっていないところがあるのも、名曲なだけに極めて残念な点です。
情景描写を主体にされる作詞家の方の作品だとは思いますが、もう少し各ユニットに集中し、ポリシーをもって表現してほしいと個人的には望んでいます。
このような立場から、『きっかけ』の歌詞の素晴らしさを表現しても説得力がありませんので、今回は割愛させていただき、他のサイトの記事を参照していただけるとありがたいです。歌詞の解説を書くことができず申し訳ありません。
乃木坂46時間テレビ内で作成された『きっかけ』MV
乃木坂46時間テレビで46時間もの長い間放送される番組の縦軸企画で、深川麻衣さん卒業企画として制作に挑んだ、アート作品のテーマが『きっかけ』の世界観でした。
その作品制作過程も含めた動画が、名曲『きっかけ』のMVの舞台です。
黒板というキャンバスに、チョークで綴られたノスタルジックな絵画の作品。
誰もがかつて一度は経験してきた、青春の舞台である学校の黒板で、46時間もの長い時間をかけて、少しずつ少しずつ繊細ながらも緻密に描かれていく過程を、番組では随所に渡って紹介されていました。
紹介されている間も、手を抜くことなく一心不乱に書き続けるメンバー。
チョークのかすれ具合が、水彩のような淡い雰囲気を醸し出して、ずっと真剣な表情で書き続ける様子がとても印象的でした。
作品を作り上げる過程を見ていると、なんだかこれまでの乃木坂46の歩みの縮図を見ているような気持ちになりました。
2011年AKB48の公式ライバルとして結成されましたが、当時は全くの無名。
AKBは既に姉妹グループも立ち上がっていて全盛期の頃で、無名どころか逆風のマイナスの状況からのスタートでした。
そんな状況下でも乃木坂46は、ひとりひとりのメンバーの個性を推して、メンバーの個性の集合体としてグループが存在する価値観をぶれずに提供され続けました。
そして少しずつ少しずつ、メンバーの個性を示すことで、世間に乃木坂46のグループとしての存在感を訴求できたのかもしれません。
マイナスの状況からのスタートで、長い努力の過程の中には傷ついて涙することや、悩み苦しんだことも、幾度となくあったと思います。
何度も何度も傷ついたとしても、決して歩みを休めることなく、ひとつひとつの活動を積み上げてきた過程、少しずつ少しずつスキルを磨いてきた過程、それが徐々に認められてく過程を思い出してしまい、いつのまにかアート作品の制作過程と重ね合わせて見入ってしまいました。
そんな『きっかけ』のMVの舞台に、流れる『きっかけ』のメロディ。
ユニゾンの歌声は確かにまだかぼそいかもしれないけど、その響きは確かに努力してきた人だけが醸し出すことができる強い意志をもって選択してきた、言い換えると自らこの困難な道のりを選んできた、きっかけが歌われているパフォーマンスでした。
現在もMVでその制作の過程や作品の数々を感じることができます。
一区切り着いたあと、明らかにここから何かが変わった、その何かを今でも確認することができるMVです。
楽曲の感動体験とそしてなぜかそこから感じてしまう努力の過程を『きっかけ』という楽曲が醸し出していることが『きっかけ』を聞いて感動してしまう1つの要素だと思うのです。
はじめての東京ドームダブルアンコール曲『きっかけ』
2017年乃木坂46は、「真夏の全国ツアー2017 Final」として、憧れだった東京ドームで公演を迎えることになりました。
メンバーもメディアにもずいぶん前から夢として語ってきた東京ドーム公演が、ついに現実のものとなった瞬間です。結成から既に7年のも月日が流れていました。
また、この東京ドーム公演は、ツアーファイナル、夢の実現だけではなく、乃木坂46を牽引してきたメンバーの中元日芽香さん、そして伊藤万理華さんの卒業コンサートという意味合いもありました。
出典:テレビ愛知「乃木坂工事中」#132
中元さんといえば、乃木坂の歴史の中で一番アイドルを体現してきたメンバーと言っても過言ではないでしょう。また、類い希な魂を揺さぶるパフォーマンスで、その存在感を示していました。
伊藤万理華さんといえば、デザイナーのご両親をもつアーティスティックなスペシャリスト。既に内外から表彰され、アーティスティックなパフォーマンスの高さは、現在の乃木坂のアーティスティックなパフォーマンスの原点というべく大切なメンバーでした。
そんな2人の卒業コンサートのアンコールを締めくくったのは、初期の頃から乃木坂を象徴する楽曲『乃木坂の詩』そして、ダブルアンコールで、選んだ楽曲がこの『きっかけ』でした。
本来は別の楽曲が予定されていたようなのですが、当時のキャプテン桜井玲香さんの発案で、自分たちの心境に合っていること、そしてひめたん、まりっかの卒業だから、この楽曲にしたいと提案されたと言われています。
そしてこの楽曲はアーティスティックなまりっかさんが、なぜか泥臭い感情がテーマのこの楽曲を一番好きだと公言されている楽曲でした。
そんな中、夢の東京ドームの最後、ダブルアンコールとして『きっかけ』が披露することになりました。
この『きっかけ』のパフォーマンス。本当にすごいです。気持ちが震えて言葉にならないくらいです。
楽曲のパフォーマンスのために舞台に上がるメンバーの様子から、カメラに捉えられているのですが、声を掛け合って、そして抱き合って、今のこの瞬間を愛おしく思っていることが、手に取るようによく伝わってきます。
この時ばかりはアイドルとは言えないのかもしれません。
ファンと同じひとりの人間として、仲間を大切に思い、その時間を共有しているように思えます。心が入ったパフォーマンスなんでしょう。
パフォーマンスが始まると、これも驚くほど泣きじゃくるメンバーの様子や、虚無感や充実感、惜別の思いなど、メンバーそれぞれの思いがぎゅっと詰まっていて、その思いが確実に見る者の気持ちを捉えて離しません。
自分の卒業コンサートでもあんな顔をぐちゃぐちゃにしてまで泣いていなかった、生田絵梨花さんの涙はとても衝撃的で、見ている側も涙なしに見ることができませんでした。4年後になって、ご自身の乃木坂最後のパフォーマンスが、この『きっかけ』になることは、この時はまだ予想もしてなかったことでしょう。
乃木坂の長いライブの中でも1推しと言える、初の東京ドーム公演ダブルアンコール楽曲『きっかけ』今も色あせることなく、ファンの心の中に、メンバー、スタッフさんにとっても、きっと心の中に確実に刻まれている思い出のシーンとなりました。
2度目の東京ドーム、それぞれのソロパートの『きっかけ』
時は流れ2021年に2度目の東京ドームを迎えることになる乃木坂46。
未曾有のコロナとの戦いは誰にも平等で、またその経験により一回り大きくなった乃木坂46が、東京ドームの舞台にはありました。
この東京ドーム2days公演の1日目に『きっかけ』が披露されました。それが、また乃木坂らしい演出の『きっかけ』に仕上がっていたのです。
それがユニゾンの魅力的な歌を、あえてメンバー全員がソロパートを担当して歌いつなぐという演出でした。
出典:乃木坂が東京ドーム公演で見せた38人で歌いつなぐ一致団結の「きっかけ」 - 坂道 : 日刊スポーツ
メンバーの個性の魅力を常に訴えかけてきた乃木坂46。
未来を見据えた現在の3期生4期生重視の戦略は、既存メンバーの大量離脱を生み出してしまいました。
年齢での区別であれば、ある程度理解できるのですが、なぜか期別で分けられてしまう点に、最近個性の魅力を提供してきた乃木坂らしくないなと、うがった目でみてしまうところも正直ありました。
そんな中に披露された、全メンバーソロパートでつなげた『きっかけ』のパフォーマンス。思わず胸を打たれてしまいました。
これが、乃木坂だ、と一瞬疑ってしまったわたしに現実を突きつけられたような気がしました。
最初の歌割りは、歌やダンスパフォーマンス、そしてモデルとして類まれな表現力を誇るエース齋藤飛鳥さんの歌い出しでした。
齋藤飛鳥さんといえば、何でもできて、完璧な女性のイメージを持たれている方もいるかと思いますが、この歌声は本当の気持ちがやさしく愛情深い、みかけではなく本当の内面の齋藤飛鳥さんが表現されていました。
キーが低いこともあるのですが、揺れた声にやさしさと感受性の豊かさの感情が乗っていて、とても理想的な滑り出しでした。全アーティストの中でああいう、揺れる感情表現が必要や楽曲を歌わせたら、ひいき目なしにわたしの中では齋藤飛鳥さんが現在トップです。。。
『路面電車の街』という別の名曲があるのですが、この楽曲の齋藤飛鳥さんのボーカルを聞くと、気持ちが震えて癒やされて、そのやさしさに共鳴することと思います。
是非、やさしい感性に触れて見たい方は、これもある意味衝撃的な楽曲なので聞いてもらえるとうれしいです。
そして全メンバーがひと節ずつ紡いでいく『きっかけ』それぞれの個性の魅力が異なることを、全メンバーが熱く訴えかけてくれます。
みんな違ってみんないい、を体現しながらも、なぜかグループとして調和された一体感。
この楽曲を聴くことで、きっと自分の感性に似たメンバーや、自分の理想の好きなメンバーを見つけることができるパフォーマンスです。
そんな等身大の彼女たちの今が表現された楽曲。それが『きっかけ』という楽曲でした。
まとめ
今回は乃木坂46の『きっかけ』という楽曲が、なぜ名曲と呼ばれるのかを、時系列で振り返ってきました。
2016年楽曲発表時の46時間テレビで、長い時間をかけて作ったアート作品が乃木坂の足跡を物語っている感動的なMVとして提供されたこと
2017年夢だった初めての東京ドームコンサートで、別の楽曲を変更してまでこだわってダブルアンコールで、乃木坂46の大きな節目として披露されたこと
2021年2度目の東京ドームコンサートにて、ひとりひとりソロパートで、メンバーの今を表現するとともに、グループとしての一体感を楽曲として提供したこと
乃木坂の歴史のほんの一部ではありますが、このような時系列の継続した感動体験
言い換えると乃木坂46のファンへこの楽曲を提供するスタンスとかパフォーマンスを継続してきたことが『きっかけ』という楽曲を名曲に育てあげた、このことを今回の結論にしたいと思います。
『きっかけ』の楽曲のパフォーマンスを見ると思い出してしまいます。
これまで所属していたかつてのメンバー
節目節目で披露してきた思い出という記憶
そして、これから決意して別々の道を歩んで行くであろうメンバーの決心
乃木坂メンバー、元乃木坂メンバーがかつて気持ちを忘れない限り
乃木坂46『きっかけ』は名曲であり続けると思えた、かえるがおなのでした。
おしまい。
出典:寺岡呼人&桜井和寿&K きっかけ(乃木坂46 Cover)