続・今日もやっぱりかえる顔

なぜか巻き起こってしまうまぬけな日常を、ひらがな中心のまぬけなテイストでお届けします。ときどき乃木坂46。

実写版『映像研に手を出すな!』の魅力を考えてみた

いよいよ『映像研には手を出すな!』実写版の放送がスタートしました。

TBSでは4月7日深夜から、MBSでは4月5日から始まり、その他の放送局でも、続々と放送開始となりました。

原作は月刊スピリッツに連載中のまんが『映像研には手を出すな!』で犬童澄瞳さんの作品です。

TV版、映画版『映像研に手を出すな!』(以下映像研)の主演は乃木坂46齋藤飛鳥さん、山下美月さん、そして梅澤美波さんの3人です。

実際に放送が開始され、数々のネットニュースやSNSでも高い評価を受けているようですが、ファンならではの視点で、映像研についての記事をまとめたいと考えていたため、実は高評価を受けたすべての記事を読んでいません。

話題になっている記事のタイトルは何度も見て、読んでみたいという衝動に襲われてことが数え切れないくらいあったのですが、しっかりと自分なりの意見をまとめるまではと思って我慢を続けてきました。

そんな映像研の作品を自分なりの視点で、まとめてみたいと思います。

 

乃木坂 映像研に手を出すな!

出典:『映像研には手を出すな!』「映像研」実写ドラマ化作戦会議

 

 

原作の映像研という作品

映像研の実写版の乃木坂メンバーの3人が出演すると決まってから、個人的には原作のまんがも何度も読み返しましたし、またNHKで放送されていたアニメーションも全話見て、すっかり映像研という作品にはまってしまいました。


丁寧に書き込まれた絵に、たくさんの文字で表現されるギミックの説明文。現実では存在しないようにみえる架空の高校世界でありながら、これまたアニメーションという架空の脳内世界を創り出す主人公浅草氏。

浅草氏 齋藤飛鳥


浅草氏のよき理解者でもあり、浅草氏の能力を引き出す役割もある金森氏。
そして浅草氏が創り出す設定の中に必要な、人物画を得意として協力して補い合いながら作品を創り出す水崎氏。

金森氏 梅澤美波


そんな他に類を見ない、独自の世界観を確立していることが、この作品の魅力ではないかと思いました。

同時に類を見ない独自の世界観という分だけ、実写で表現するには、特に難しい作品ではないかと心配をしていたのもまぎれもない事実です。

水崎氏 山下美月

実写版映像研の特徴

現実ではありえなそうな架空都市にある高校を舞台に、浅草氏、金森氏、水崎氏が躍動しなながら、更なる架空空間であるアニメーションに挑む本作品ですが、実写版を見て驚くことがありました。

それは、浅草氏を演じる齋藤飛鳥さん、金森氏を演じる梅澤美波さん、水崎氏を演じる山下美月さんの3人が、何度も何度も読み返した原作の3人の、イメージにぴったりだったからです。

それも、このレベルであれば、原作のファンの期待を裏切らない、と確信できるほどの完成度でした。

金森氏の前かがみのいかり肩は、まんがでしか表現できないはずと思い込んでいました。山下さんは水崎氏の前髪のない特徴的な髪型だけで、なぜか水崎氏に見えてしまいます。

迷彩の帽子をかぶった飛鳥ちゃんは、まるで別人で声まで変わってしまって、長年見続けててきたわたしでさえ、飛鳥ちゃんではなくて浅草氏に見えてしまったくらいです。
それはそれでファン失格ですけどね。

3人のシルエットはまさに、映像研の原作の中で躍動する映像研の3人だったのです。

 

原作と異なる点

確かに原作のイメージが異なる点もありました。

原作そしてアニメ版との決定的な違いは、作品の映像の明るさだと思います。

原作は緻密に書かれた絵と文で、舞台の芝浜高校をはじめその世界観に影を感じます。

一方実写版映像研の映像は、露出が明るい映像を使って、物語が進行していきます。
これは『あさひなぐ』でも太陽の光を効果的に使ったり、全体的に露出が高い画面構成だった、本作品の英監督のこだわりもあるのかもしれません。

しかし普段からまんがやアニメーション、そしておたく文化に代表される日本のサブカルチャーに、普段関わっていない人にとってみると、ダークな世界観は受け入れるのに時間がかかることもあり、明るい画像の中で映像研の3人が躍動している方が、はるかに多くの人に受け入れやすい効果があるのではないかと感じました。

次の映画の公開を見据えて、TVを通じて様々な年代の人々に、作品が愛されるための訴求効果があったのではないかと思います。

 

齋藤飛鳥という女優

これまでもけっこう齋藤飛鳥というひとの活躍ぶりは、ずっと見てきたつもりだったのですが、今回の浅草氏の演技は、確実に想像をこえてこれまでまったく見たことのない新しい一面がだったのではないかと思います。

以前こんな記事を書いたことがありました。

www.facefrog.net


この記事の中で、齋藤飛鳥という女優さんの特徴としてこのように表現してみました。

空想と現実の狭間を表現する能力に卓越している


作品の評価が高かったFOD『鳥,貴族』でも異次元の世界の物語を漂うように存在していました。名作『あの頃、君を追いかけた』では、誰もが学生時代に経験したことがある、現実と記憶の狭間で生き続ける憧れの女の子像を、リアルに演じきりました。

そして映像研では、現実離れした舞台設定の中で、更に創造の世界を創り出す主人公浅草氏を演じる飛鳥ちゃん。


コミュ力不足なのに、すごい才能を持つ浅草氏の言動を見ているだけで、おもしろくて少し笑いそうになったり、ださかわいさに癒やされたり、そしてその才能で創り出す世界観に自然と引き込まれたりします。

ご自身とはまったく違うキャラクターで、そして現実離れした舞台設計の中で、リアルに存在することができる、これがやっぱり齋藤飛鳥という女優の魅力だと再確認できました。

自分と役のキャラクターの振れ幅

ここからは、個人的な意見の域を出ないのですが、飛鳥ちゃんのことをわたしは、引っ込み思案で、そしてやさしい普通の女の子らしい女性だと思っています。

つめを伸ばすこともなく、ネイルも好まないし、髪を染めることもありません。そして化粧をしないことも多い、本当に古風な考え方をもつ、いまどきいないやさしい等身大の女性です。


ただおにいちゃんたちの中で育ってきた分だけ、ちょっぴりお口がわるい笑のと
負けず嫌いなところが、ファンのみなさんがSっ気があると言われる部分かもしれません。

そのやさしい女の子なのに、なぜご自身と比べて振れ幅が大きい浅草氏、早瀬真愛そして「鳥,貴族」という役で評価が高い演技ができるのでしょうか。

その演技力を支えている原因のひとつが、モデル齋藤飛鳥の存在ではないかと、今回考えました。

齋藤飛鳥というモデル

数々のファッション誌にモデルとして起用される飛鳥ちゃんは、最初の頃はご本人らしい笑顔の写真が多かったのですが、いつの頃からか、他のモデルさんとは違って写真という世界観にアンニュイな表情で存在することが多くなったように思います。


え、これが本当に飛鳥ちゃん?と驚いたことも数知れません。

Overture 齋藤飛鳥
出典:OVERTURE No.022

最近こそ、アンニュイな表情の飛鳥ちゃんを見慣れてきましたが、このアンニュイな表現ができるのが、飛鳥ちゃんと他のモデルさんの大きな違いのように思えます。

やさしくて普通の女の子だったはずの飛鳥ちゃんは、モデルとして自分とはまったく違うキャラクターのアンニュイでかっこいい表現を求められてきて

その要望に応えようと、スタッフさんの要望をやさしい感性でくみ取り、そして人一倍負けず嫌いな努力で必死にがんばられてきたことでしょう。

モデルとして、ブランドの世界観に、雑誌の世界観に、服の世界観に自らを演じて表現し続けてきたことが、表現の振れ幅の大きい役柄でも、しっかりこなすことができる、希有な女優さんへ進化した秘密ではないかと思いました。

まとめ

では、原点に戻って、なぜわたしが齋藤飛鳥という女優さんを、空想と現実の狭間を表現する能力に卓越していると感じたのでしょうか。

そこには、自分と演じる役の振れ幅があっても、演じきる実力が備わっていたことが、今回の映像研を見てわかったような気がします。

 

芸能界にはたくさんの女優さんがいます。

清楚な役が得意な人や、けなげな役が得意な人、明るい役が得意な人など、得意な役柄を持つ女優さんも多いことでしょう。

でも、齋藤飛鳥という女優さんはきっとどんな役柄が来たとしても、その振れ幅の大きい演技で対応されることでしょう。

ただし忘れてはいけないことがあります。
自分とまったく違うキャラクターと持って生まれた自分らしさを埋めるものは、きっとただ1つしかありません。

それが並大抵ではない努力です。


映像研の作品は10月に本読みが始まり、すべて撮影が終わったのはなんと3月でした。

都内では大がかりな撮影ができないので、冬のまだ暗い朝早くに2時間かけて移動して撮影に挑まれていました。

日々のモバメでも撮影での苦労どころか、まったく弱音を吐かない飛鳥ちゃんですが
どんな状況で撮影されているかは、すべて山下ちゃんがモバメで教えてくれていました。

その状況から察するに、撮影に挑むための努力は本当に並大抵ではなかったと思います。

並大抵の努力ではない、ある意味ファンに届けるための自己犠牲の精神で届けられた作品が映像研という作品でもあります。

そんな思いで、これから続くTVドラマ、そして公開される映画、円盤化される媒体を
楽しみに、そして大切に見ていきたいと思う今日この頃でした。

努力と犠牲のうえに素晴らしい作品を提供していただき、ありがとうございました。

こんなことがあるから、毎日楽しみで楽しく生活ができるんだなと思ったかえるがおなのでした。

おしまい。