続・今日もやっぱりかえる顔

なぜか巻き起こってしまうまぬけな日常を、ひらがな中心のまぬけなテイストでお届けします。ときどき乃木坂46。

正論おじさんが現れる理由とクレーマーと共通の対処法

Webニュースの記事によると、最近「正論おじさん」なる方の対処に困っている商店街があるとのことです。道路交通法を盾に道路にはみ出た売り出し旗や商品陳列、さらにお客さんの自転車まで、店内に押し込み注意をするそうです。

 

厳密に言えば道路交通法を盾にしている以上、論理的には「正論おじさん」を行動へ走らせる根拠は正しいのかもしれませんが、商品や店舗の施設、そしてお客さんの自転車まで勝手に移動する行動自体は、勝手に他人の財産に触れる行為として明らかに違法だったりします。

今回のかえるがおはメーカーのクレーム処理業務を行ってきたかえるがおの経験から、一種クレーマーと同様の思考を持つ「正論おじさん」がなぜ生まれるのか、そしてわたしなりの対処法をクレーム処理の経験をまじえてまとめてみたいと思います。

 

 

 

クレーマーと正論おじさん

この正論おじさんは、メーカーに対して苦言を呈すクレーマーさんにとても多いタイプです。薬局で対応が悪いと怒鳴っている人がいたのですが、よーく見てみると話したことがあるクレーマーさんだったりしました。結局自己顕示欲を発揮する場所が違うだけで、内面の精神構造はよく似ていると思います。

このような正論おじさんの特徴として、働いていたときにある程度のステータスがあって、現在は引退されている年配の男性の方です。そして共通点としてとても元気で、元気が有り余っています。

 

年配の男性のクレーマーさんは、実は大きく分けて2つのタイプがあると思います。

1つはニュース記事で触れられた正論おじさんタイプ。そしてもうひとつは現実をお酒で紛らわせているような自暴自棄おじさんタイプです。

違いは簡単で、正論おじさんの気持ちが外部に向いているのに対して、自暴自棄おじさんタイプは気持ちが自分の内面に向いています。

自暴自棄おじさん


例えば、自暴自棄おじさんの場合には、こんなことがありました。

メーカーの製品に対する苦言を電話で伝えている最中に、電話の向こうで「ガラガラがらーん」みたいな大きい音が聞こえたそうです。何があったのか聞いてみると、「もう使えないから2階から庭に製品を投げ捨てた」とのこと。もちろんお昼から酔っ払っています。

後日製品を回収して確認すると、外観は割れて粉々になっていて、修理もできないくらいでした。でも、お酒が抜けると自分がやったことに気がつき、どうにか元に戻してほしいと何度も懇願されても、どうしようもありません。

修理で返却した後に、お酒を飲んで配送業者に刃物を向けた顧客もいました。配送業者さんから再配達を拒否され、元警視庁の顧問と一緒に、CE兼SEとしてわたしが修理品を届けに行ったことがありました。

 

以前から朝からお酒を飲んでしまい暴れることで有名な顧客でしたが、なぜかわたしだけは相性がよくて、どうして刃物を向けたのか聞いたところ、「もういらないから持って帰ってほしかった」と教えてくれました。


結局製品を使いこなすことができなかったことがトラブルの原因だったようです。ゆがんだコミュニケーションの方法ではありますが、酩酊状態ですので自身を制御することもできないのでしょう。

使いこなせずいやになったことはよくわかりますが、お客様の財産を預かっている以上、メーカーとしては返却しないといけない義務があるんですよねー、と説明すると「じゃあ、中古ショップに売りに行く」というので、せっかくおすすめのよい装置を買ってもらったのに、残念ですがお客様の財産なのでおとめはできないですよ、と話しました。

きっとちゃんと話ができる人が日常にいなかったんでしょうねぇ。するとなぜか気に入ってもらったようで、お気に入りのおいしいパン屋さんにつれていってくれるというのです。どんなパン屋さんかなと思いながらついて行くと、たどり着いたのはなんとイートインスペースがある普通のコンビニでした。

 

聞けば毎日ここに来てパンを食べるのが日課とのこと。わたしは切なくなって涙が出そうになりました。これまでの数知れないクレームも、刃物を向けたことも、製品を売るといったことも、すべて自分は孤独でさびしいというこの顧客なりのSOSだったんですね。明らかに著しくコミュニケーションの方法がまちがっていますが。

 

異常行動の背景

自暴自棄おじさんと正論おじさんの決定的な違いは、正論おじさんは現役時代にある程度のステータスがあり、昔のバリバリに働いていた時代が忘れられないことです。正論おじさんの場合には、孤独感だけでなく、さらに自己顕示欲が重なり異常行動に発展してしまいます。

両者とも背景には孤独があります。

以前ストーカーの心理を利用した対策方法の記事の中で、クレーマーもストーカーと同じで依存するのは本当は誰でもよいこと、そして私生活が充実もしくは危機的状況になると自然にその行為が消滅することを書かせてもらいました。


現役時代はバリバリ働かれていて、部下もたくさんいてある程度のステータスがあったんでしょう。職場人間だったのかもしれません。しかし定年後、その大きなプライドが邪魔をして家族や近所のコミュニティに溶け込むことができず、そして孤独に陥ったことでしょう。

 

自分の生きている証というべき、居場所を求めているところにたまたまターゲットにされただけで、本当は別の誰でもよいのです。

 

クレーマーさんはメーカーと念書を交わしてメーカーから購入を拒否されても、同業の別のメーカーの製品を買ったり、挙げ句の果てにはまた同じメーカーの商品を買って戻ってきたりします。メーカーにクレームを入れることで相手にしてくれるという成功体験が、孤独と戦っている心の隙間を埋めるには一番手っ取り早いようです。

 

世直しさん

話を正論おじさんに戻しまして、正論おじさんのことをメーカーでは世直しさん(よなおしさん)と呼んでいました。


なぜ世直しさんというのかといいますと、世直し旅の水戸黄門様が、世にはびこる巨悪を正されるかのように、振舞われるからです。

自分はまったく関係ないのに、それでいいのかと正義感を振りかざしメーカー側の姿勢を責めて正すのです。今回の商店街の例も全く同じです。ぜんぜん縁もゆかりもない商店街を、何の権力があるのかわかりませんが、法を盾に指導監督しています。

例えばこんなことがありました。世界的な問題が発生したときには、ぜんぜん違うメーカーの製品を持っている世直しさんが連絡してきました。

該当機種かもしれないのでちゃんと製造メーカーに確認された方がいいですよ、というと、「なぜこんなことになったんだ、これでいいのか。社長を出せ。社長からちゃんと説明させろ。」と言われました。

世直しさんの心情としては、該当の製品を持っていて迷惑を被っているユーザーの代わりに、メーカーと交渉しているという正義感から行動に移しているので、自分の製品が該当だろうが、他のメーカーの製品だろうが、まったく関係ないのです。

 

ちなみに「社長を出せ」は常套句なんですが、どこぞのおじさんに社長が説明してくれるとは最初から思ってないのかもしれません。何かを購入するときに「ちょっとこれまけて」と一応言ってみる、たくましい関西圏のおばちゃんのに多いタイプと同じなのかもしれません。

こんなQに対するAは必要なく、話題をクレーマーさんの主張の内容に変えて行くことで、明確な回答を避けることができます。


こんなこともありました。定期的に連絡されるクレーマーさんで、主訴はメーカーはMicrosoftの搭載をやめるべきという主張です。この方の論理は、Microsoftとメーカーは結託してWindowsのOSを搭載して製品価格を高騰させ、消費者から費用を搾取しているという論理です。すべてAndroidを搭載し、製品の価格を下げるべきだと力説されます。

ちなみにこの方、顧客かどうかもわからず名前もわかりません。名前を聞くと個人情報をなぜ収集するのだと騒ぎ出されます。

この方の場合もご自身の中にある正義感から行動に移されていますが、日本の企業ではほぼWindowsを使っている現状や、業務システム構築のために膨大な費用がかかっており、OSを変えることで設備投資の費用がさらに膨れ上がることにはまったく想像できていません。

あくまでご自身の常識の中でしか、思考が働かないのもこの世直しさんの特徴と言えます。

対処する場合の鉄則

実はわたし、これまでクレームを受けて、幸いにも交渉が決裂したり、暴力を受けたり、裁判沙汰になったり、もめたりしたことがありません。


特別なことをしているつもりはないのですが、なぜか最後は円満に終わってしまいます。きっとわたしが変わっているからだとは思うのですが、自分でもそのうまくいく秘訣はよくわかりません。ただし、正論おじさんに対してやっていけないことはわかります。

前の世直しさんの例で出した、世界的な問題でメーカーの責任を問われた場合では、言ってはいけない言葉は、その部品は他のメーカーの製品なので、うちの製品ではないんですよ、という正論は言ってはいけません。それを言うと責任転嫁だと激怒されます。怒るきっかけを与えることになります。正論おじさんに正論を言うと、プライドを傷つけてしまい激怒されます

相手は正義感を振りかざす目的で来るのであれば、その話を受けないことには何も前に進みません。まずは来た動機を消滅させることが第一です。

本当はどのコミュニティでもうまくいかなかった、失敗経験による劣等感の塊です。これまで自分の話を真剣に聞いてくれた人は少なかったことでしょう。ご自身の狭い視野から来る主張なので、正直突っ込みどころは満載です。

 

でもここは同意もせず、ましてや否定もせずじっくり話を聞くことが大切です。

直接聞かせていただいたので、お気持ちはよくわかりました。

 

この言葉を挟む程度です。話を聞くことで、この人は話を聞いてくれる人だという信頼感を得ることにつながります。元々は孤独なので、時間をかけて聞くだけでなぜか信頼してもらえることになります。

 

反撃方法

じっと耐えて話を聞き、おじさんの話すこと(やってきた動機)が終わると、こちらの反撃の番です。

反撃の時にも一番重要なのは、相手を否定しないことです。否定すると昔は偉かったという唯一のプライドを傷つけることになり、これまで培ってきた信頼関係が破綻して、また元に戻ってしまいます。

しかしできないことはできない、悪いことは悪いとはっきり伝えなければいけません。
そんな時には、わたしだったらこんな感じで話し始めます。

お気持ちはよくわかりました。

ただ、○○さんもご存じのように、それはできないんですよねー。

せっかくお話いただいたのに申し訳ありません。

 
ここには、①気持ちの受け止めたこと②相手を立てることの2つを利用して、できないこと悪いことを、みんなが知ってる既存の常識のように表現するのです。

そうすると、「確かにそれは知ってるけど…」と知ったかぶりし始めてもらえれば、もうクレーム処理は終わりのようなものです。

決め台詞を言って、お帰りいただきます。

 

せっかく直接お話を聞かせていただいたので、今後の製品の参考にさせていただきますね。


この言葉は最初に言ってしまうと信頼関係が構築されていないので、「今後はいつだ?」「ちゃんとできたかどうか報告しろ」と言われてしまいます。

そのため信頼関係を構築して、既存の事実と違うこと主張しちゃったなーという、ある種の後ろめたさがあり、相手も拳の収めどころを探っているときこそ効力を発揮します。その見極めは重要だと思います。

おばちゃんタイプだと、もっと信頼関係の構築に時間がかかります。


以前の記事で信頼関係を築いた後、サプライズで収束させる例の記事を書かせていただきましたので、時間があるときにでも目を通してもらえるとうれしいです。ちなみにこの記事もまた、すごーく長い記事です。かなり余裕をもった時間がないと、読まれるのはおすすめできません。

 

正論おじさんの対処法

ようやく最後に、Webニュースで報じられた、商店街が困り果てている正論おじさんの対処法です。わたしだったらと置き換えて、対処方法を考えて行きたいと思います。

まず正論おじさんが現在のように行き過ぎた監視活動を行うのは、一度は警察にも認められたという成功体験によるものです。

かなり高齢とのことですので、現在の行動に変わる新しい代替行動も見当たらないでしょうし、危機的な状況が正論おじさんに訪れない限り、問題行動をやめることはないでしょう。

いろんなお店に出没することから、おじさんが信頼して話ができると思っている商店街の人がいない状況と推測します。

まずは「以前はありがとうございました」と語りかけ、おじさんが信頼して話してくれる人物を作った方がよいかと思います。

わたしだったら、話を聞くことから始めます。ある程度信頼を得ることになっても、禁句なのは商店街のみんなが困っていることです。

方法はいくつかあり、まず代替の役割をあたえることが有効だと思います。

おじさんのおかげで成果が出て助かりました。やっと警察が動いてくれて今後は警察が動いてくれるそうなので、これまでありがとうございました。本来は警察の仕事なのにおじさんがやってくれて、結構風当たりも大きくなかったですか?大変でしたでしょ?

 

こんな語りかけでいかがでしょうか。


クレーマーも同様に代替のことがあれば、固着した行動がそちらに移るという習性を使って、顧客が減ってきているけど、もう一度顧客を呼び戻すアイディア担当とか、ゴミ捨て場のルールの確認担当とか、別の役職を与えてこちらに取り込むのがいいかもです。

 

商店街の会合や飲み会にも呼んで、みんなと親しくなると敵対行動は減るのではないでしょうか。でしゃばりでおせっかいという気質があるので、役割分担は明確にしておきます。何か口出ししてきたら、

 

ご存じのようにその仕事は会長の役割なんですよねー。お気持ちは本当にありがたいのですが、会長の立場がなくなってしまうので、すみません。

 

といいながら、行動範囲を狭めていくことで、自分のやっていることを客観視しやすくして、フェードアウトを狙うのもよいのかもしれません。


 

まとめ

正論おじさん、クレーマーさんは、今回の例だけではなく、周囲とのコミュニケーションが希薄になった現在、顕在化していないだけで、みなさんのまわりにも、予備軍を含めてきっとたくさんいることでしょう。

対処する側にあった対処法が必要なため、今回の記事のわたしの対処法がそのまま役に立てるとは思えませんが、すべての対処方法には共通点があります。

同じレベルまで下がって、同じ土俵の上で正論で口論をすることこそが、正論おじさん、クレーマー、そしてストーカーの思うつぼです。

なかなかできることではありませんが、こちらが心の余裕を持つことで、相手の精神年齢がかなり低いことがわかります。幼い子にばかと言われても腹が立たないのと同じように、精神年齢が低い分だけ時間をかけて話を聞いてあげることが大切だと思います。

同時にそれが成功体験にならないように、相手のプライドが傷つかない枕詞を使って、できないことを伝えて、相手の行動範囲を減らすことが有効のように思えます。

もしよかったら参考にしてもらえると、この長い記事を書いたかいがあります。
もし読者の方のニーズがあれば、クレーム処理の体験談はたくさんありますので、守秘義務に触れない程度に紹介させていただきますね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

※新生かえるがおの300記事目がこんな記事ですみません。楽しい話を期待されている読者の方にお詫びします。